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上場創業者は会談1時間で合意の握手 買収側に必要なのは夢の提示と熱意 / インタビュー後編

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社代表取締役社長佐武 伸

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売却側の強みを見つけ出し、事業計画を策定する

同社の取扱案件のうち、売却目的で増えているのは、海外展開に向けた経営資源の確保である。国内市場では限界があるため海外に展開したいが、単独では難しく、自分の夢をかなえてくれる有力企業の傘下で長年の目標を実現したい。そう望むオーナーが多くの業種で増えた。売却後に、オーナーが引き続き社長として関与しつづけるケースもある。

売却側オーナーの年齢が若くなったことも昨今の傾向だ。親族内に後継者候補がいなければ30代のうちからM&Aを検討し、たとえば自分の経営能力では年商10億円が限界だと認識すれば、早くも30代で大手への売却を考えるオーナーもいる。佐武氏は「年齢にかかわらず、イグジット(出口戦略)を意識するオーナーが増えた」と見るが、一方で、自社の強みを把握していないオーナーが多いという。

「オーナーは自社の課題は把握しているが、意外に強みには気づいていない。例えば、大手企業や役所との取引口座をもっていても、長年の取り引きで当たり前のことと感じており、それが強みであることに気づいていないのだ。ベンチャーにとっては宝の山という会社もある」。

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同社は第三者の目線で強みを見つけ出し、経営課題を認識して、オーナーが会社の将来をどうしたいのか、目標を共有して、事業計画を策定している。強みと課題を明確にし、目標や方向性を確認できれば、ベストなパートナーを適切な条件で見つけることが可能となる。

社長が交渉に出席すれば買収側の熱意が伝わる

買収側に対しては、企業規模にもよるが、交渉の場にできるだけトップに出席してもらうことを要請している。経営企画担当役員止まりでなく、社長が登場すれば熱意が伝わるからだ。売却側オーナーが知りたいのは、ひとえに、なぜ自社に興味をもったのか。その回答を迫真のセリフで語れるのは社長である。

とくに上場企業でも創業社長の場合、個人保証や資金繰りの辛酸を舐めているだけに、オーナーの心情を理解でき、交渉の落とし所も心得ているという。

「創業社長が“御社のこんな点が好きになった!こういうゴールをめざしませんか!?うちと組めば達成にできますよ!”というようにアプローチするので、会話が弾む。初対面でも1時間もすれば握手をし合って、提携が合意してしまう」。

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ところが、これは経営企画担当役員などに見られがちな傾向なのだが、財務内容の問題点をあれこれ指摘して理由を問い質したりすると、売却側の意欲が萎え、M&Aの魅力が減じてしまう。だから佐武氏は「トップ会談では数字の話をしないようにと釘を刺している」。

こうして、かえでファイナンシャルアドバイザリーは、中堅中小企業の活路を見出している。今後はさらに一段と踏み込んだサービスを提供する意向だ。オーナーを公私にわたってサポートし、海外展開、子息の海外留学なども支援しているという。

インタビュアー

KSG

眞藤 健一

経済ジャーナリスト

小野 貴史