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検体検査機器・試薬のシスメックス、英国企業を買収 ライフサイエンス事業強化

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東証1部上場で検体検査機器・試薬開発・製造・販売で高シェアのシスメックス【6869】は、英国のOxford Gene Technology IP Limited(以下、OGT社)の全株式を取得すると発表した。

OGT社が保有する細胞遺伝学検査※1領域での事業やノウハウ、および次世代シーケンサー(以下「NGS」)※2用の試薬開発力を獲得することにより、ライフサイエンス事業の基盤を強化する。

OGT社は、サザンブロッティングハイブリダイゼーション法※3を開発したEdwin Southern教授が1995年に創業し、22年の歴史を持つ、遺伝子解析技術のパイオニア企業。同社は細胞遺伝学検査領域におけるFISH※4(Cytocell®)事業、アレイCGH※5(CytoSureTM)事業、ならびにNGS用試薬(SureSeqTM)事業を保有している。

FISH事業では、高品質な約430種類のFISHプローブ※6を提供。またアレイCGH事業では、先天性異常などの遺伝子疾患の検査に用いられるアレイ製品を提供しており、いずれの製品群も市場から高く評価されている。さらにNGS用試薬事業では、がん診断パネルおよびその測定の前処理に用いられる試薬を提供している。

シスメックスは、ライフサイエンス事業において、疾患の発症や再発リスク、治療効果予測などへの応用が期待される遺伝子測定技術の研究開発を推進してきており、今回、ライフサイエンス事業のさらなるポートフォリオの拡充と技術基盤の強化を目的として、OGT社を完全子会社化する。

本買収により、細胞遺伝学検査市場では、シスメックスの保有するフローFISHなどの自動化技術と、OGT社の保有する高品質な試薬開発力の融合により、ユニークなソリューションを提供する。さらに、OGT社の保有するNGS試薬開発力の獲得を通じて、ゲノム医療における技術基盤を強化する。

【OGT社の概要】
名称: Oxford Gene Technology IP Limited
所在地:英国 オックスフォードシャー州
創業者:Professor Sir Edwin Southern
代表者:Dr. Michael Evans
事業内容:細胞遺伝学検査に用いる診断および研究用試薬の開発、製造、販売
     ならびにNGSに用いる研究用試薬の開発、製造、販売
資本金:414ポンド
設立:1995年
売上高:19.7百万ポンド(2016年9月期)

【注釈】

※1 細胞遺伝学検査:
(Cytogenetics)
細胞遺伝学は染色体の研究、特に染色体異常に起因する疾病に関連する研究を指す。研究・検査は通常、白血球細胞、羊水、あるいは組織標本を使って行われ、Gバンド法による核型検査とFISH法を基本とする。その他に重要な手法にはマルチカラーFISH(多色FISH)法や比較ゲノムハイブリダイゼーション法(Comparative Genomic Hybridization、CGH法)などがある。

※2  次世代シーケンサー:
(Next-Generation Sequencer)
遺伝子情報を持つDNAの塩基およびこの配列を、同時平行で大量に読み取る解析装置。

※3 サザンブロッティングハイブリダイゼーション法:
(Southern Blotting Hybridization)
Edwin Southern教授 が考案した、DNAの解析手法(J. Mol. Biol., 98, 503-508)。
サザンブロッティング (Southern Blotting) とは、DNAのアガロースゲル電気泳動のパターンをフィルターに固定化し解析、同定するための手法であり、サザンハイブリダイゼーション(Southern Hybridization) は、核酸の相補性を利用して目的遺伝子あるいは塩基配列を検出する方法である。多数存在するDNAの集合体から、特定の遺伝子のみ検出、解析することが可能となる。

※4  FISH:
(Fluorescence In Situ Hybridization)
特定の遺伝子にだけ結合する蛍光物質を使って染色体の中にある目的の遺伝子を検出する方法。
FISHによる検査は、がんや白血病の遺伝子検査として認知されており、世界保健機関(WHO)の下部組織である国際がん研究機関が定める腫瘍分類の規約(WHO分類)に収載されている。

※5  アレイCGH:
(Array Comparative Genomic Hybridization)
染色体検査の手法の一つであり、染色体の異常が疑われる検査サンプルに対し、正常な DNA の量や配列と比較して両者の差から異常を判定する手法。
アレイCGHによる検査は、2013年、米国遺伝子検査の主要なガイドライン(American College of Medical Genetics and Genomics; Standards and Guidelines 2013)に収載されている。

※6  プローブ:
(Probe)
特定のDNAと相補的な塩基配列で構成され、検出する対象となるDNAと結合するように人工的に作製された塩基配列。目的のDNAがどこに存在しているかを検出する際に使用される。