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経営は次世代にバトンを渡すリレー 100年企業をめざす手段にM&Aを活用 / インタビュー前編

TOMAコンサルタンツグループ株式会社代表取締役藤間 秋男

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「初めにM&Aありき」という判断はしない

TOMAコンサルタンツグループはクライアントに対して、みずから範を示す経営を実践している。「日本一多くの100年企業を創り続け、1000年続くコンサルティングファームになります」。このビジョンに向かって、2年後に代表取締役理事長の藤間秋男氏が会長になり、取締役副理事長の市原和洋氏に代表を承継する予定だ。

「会社を永続させるためには、経営者が65歳になったら世代交代をすべきである」と持論を述べる藤間氏は、従来から社内でも65歳での退任を宣言していた。多くの老舗企業の経営を研究した結果、経営とは、より良い状態で次世代にバトンを渡すリレーであると考え、自身もそれを実行に移すのである。

TOMAの創業は1890年(明治23年)。藤間氏の曽祖父が司法代書人(現在の司法書士)を開業し、藤間氏は5代目にあたる。1982年に藤間公認会計士事務所を立ち上げ、いまでは約200人の専門家を擁し、約1000件の顧問先を抱える規模に発展させた。

この足跡はTOMAのM&Aアドバイザリー業務にも反映されている。何を目的にM&Aを実行するのか?それは企業を継続させるためである――この1点にTOMAは判断を集中させていると藤間氏は明言する。

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「私どもは会計事務所なので、M&Aのアドバイザリー報酬や仲介報酬で食べているわけではなく、M&Aの報酬を思い浮かべながら仕事をしていない。事業承継などの相談を受けた時に『初めにM&Aありき』という判断をせず、どんな手段が望ましいかを検討して判断を下している。こちらが『M&Aありき』という方針では、お客様も本音で相談してこないだろう」。

創業家、社員、取引先の幸せをすべて実現させるM&A

事業承継の相談に対しては、まず親族への承継を検討し、後継者候補がいなければ親族外への承継を検討し、それでも候補者がいなければ企業売却を検討している。藤間氏は経営者向けの講演で「皆さんは会社を残したいのか?それとも会社を一族に残したいのか?」と問いかけるが、永続企業をめざすには、後継者は創業家の生活を守り、社員の幸せを保証し、取引先の幸せも保証できる人物であることが必須だ。

M&Aの判断もこの基準で下している。あるメーカーの場合、急死した社長の後任にビジネス経験の乏しい夫人が就いたが、番頭格の役員の行動を掌握できず、不信感が渦巻くようになった。TOMAは不動産管理会社と事業会社に分割し、事業会社を同業メーカーに仲介して売却を成立させ、夫人には不動産収入で生活を維持できるように取り計らった。

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M&Aを経て、精神的に追い詰められていた夫人は平穏な日常を取り戻し、夫人の経営能力に不安を抱いていた社員も、安心して業務に専念できるようになったという。藤間氏は

「私どもは会社の継続を目的に、創業家、社員、取引先の幸せがすべて実現するようにM&Aに取り組んでいるので、喜んでいただけるケースが多い」を自負するが、これもM&Aを第一の目的にしていないからである。

数年前からは新たな売却動機による相談も増えてきた。少子化、グローバル化、IT化に自社の経営資源だけでは対応できず、さらに成長するには、大手企業などと経営統合したほうが現実的と考える50歳前後の経営者が増えているという。統合形態はM&Aよりも合弁会社設立が多いが、藤間氏は「中小企業の開発力と大手企業の販売力がシナジー効果を生みやすい提携の仕方だ。これから多くなっていくのではないか」と見通している。

インタビュアー

KSG

眞藤 健一

経済ジャーナリスト

小野 貴史