プレミアグループ【7199】の本社を取材に訪問したのは、さる9月14日の午後4時だった。社長の柴田洋一氏は「グッドタイミングですね。いまから30分ほど前にM&A案件の成約を情報開示したばかりです」と切り出した。
このM&Aは、自動車整備業界をメインとするソフトウェア開発・販売を行うソフトプランナー(千葉県成田市)の株式を80%取得して、子会社化した案件である。成長戦略に大きな楔(くさび)を打った。
同社は、加盟店としてネットワーク化した約1万9000社の自動車販売店を介して
①中古自動車の購入客対象のオートクレジット
②自然故障による修理費用を保証するワランティ
③自動車の整備・板金・新車仲介販売などを提供している。
個品割賦あっせん事業者の多くは、信販専業やメーカー・小売業系列である。一方、ガリバーインターナショナル(現IDOM)の孫会社として創業した同社は、ファイナンスと自動車販売のノウハウを併存させ、オート分野に特化した独立系事業者として地歩を固めてきた。
2018年3月期の営業収益は90億6471万円、税引前利益は19億7890万円。営業収益の構成比は、75.8%がクレジット事業、22.8%がワランティ事業、1.4%が整備・海外事業である。19年3月期には営業収益106億3900万円、税引前利益19億4200万円を見込んでいる。
中長期の重点施策は、「MULTI ACTIVE戦略」と銘打ったクロスセル営業とノウハウ転用によるワランティ事業など自動車関連市場での収益機会拡大である。当面、オートクレジット事業以外の営業収益構成比を50%に引き上げる方針だ。
全国10カ所に整備工場を配置自動車販売店とリンクさせる
柴田氏は事業方針を次のように説明する。
「自動車が販売・利用・修理・買い替え・買い取りなど販売店からお客様を循環するプロセスで、さまざまなビジネスが存在しています。当社グループは『カーライフのトータルサポート』の提供に向けて、シナジーを創出できる事業領域を開拓していきます。その手段としてM&Aを展開する計画です」
これまでの大規模な出資案件は5件。タイでの合弁会社設立に25%、インドネシアでの合弁会社設立に33%、IOT会社に49%、システム開発会社に67%、自動車整備・板金事業会社に100%出資してきた。ソフトプランナーへの出資は6件目である。
ソフトプランナーの子会社化には、こんなシナジーを意図している。
オートクレジット信用供与額の約4.6兆円(日本クレジット協会調べ)、中古車小売市場の約3兆7000億円(矢野経済研究所調べ)の市場規模に対して、自動車整備市場は約5兆4000億円(同)におよぶ。同社はこの市場に参入して、ソフトプランナーが保有する整備システムを整備事業者に販売してネットワークを形成して収益機会を拡大する。さらにオートクレジットやワランティを取り扱う自動車販売店をリンクさせ、整備工場の稼働率を向上させる。自動車販売店にとっても安定的な入庫先の確保はメリットが大きい。
M&Aの基準は「ハンズオンで経営に入れて、短期間で収益化できる案件であること。先行投資をして収益化できるのは5年後というような案件はあまり考えていません」(柴田氏)。件数の目標は立てていないが、整備工場については、M&Aで政令指定都市など全国10カ所に構える構想だ。
買収先と企業文化を統合しない従来の企業文化を踏襲させる
PMIにはどう取り組んでいるのか。これまで10人以上のM&AアドバイザーにPMIの要諦を尋ねたところ、ほとんどが「企業文化の統合」と答えたが、柴田氏の方針はやや異なる。
「出資先の経営にはハンズオンで関与します。企業文化を統合しようとしたこともありましたが、相手先の企業文化は従来の内容を尊重して、統合する必要はないという方針に切り替えました。それぞれの業態に合った風土や働き方があるので、最低限、当社の経営理念を実践していただくだけです」
同社の経営理念は「強い」(高い志・何事にもチャレンジ)「明るい」(常にプラス志向)「優しい」(利他の精神・感謝の気持ち)。この3つを踏まえて、相手企業は従来の価値体系を踏襲ながら経営を継続している。
プレミアグループが進めるM&Aによる事業領域の拡大は、いかにも手堅い。柴田氏は「信販専業やメーカー・小売業系のクレジット会社に比べて、多様なニーズに対応できるのが当社の特徴です」と語るが、向かう先は、いわばオートクレジットを核に据えた自動車関連事業の生態系づくりにも見える。