子供が高学歴で活躍していると
後継者になってもらえない現実
現状では売却の相談に対して、成約の可能性を見出して交渉に入るのは5割程度である。あとの5割のうち、4割は都内の関連会社に委託して事業再生に入り、もう1割は再生の可能性がないと判断して、弁護士に依頼して清算に移行している。
早嶋氏の経験によると、社長が引退しても、従業員の力か、あるいは何らかの仕組みでキャッシュを生み出せる企業には業種を問わず確実に買い手がつく。では、なぜ後継者が不在なのかと言えば、こんな背景が多いのだという。
「年商1億5000万円~2億円規模の社長の年収は1000万円ぐらいだが、20~30年前は経費も潤沢に仕えて派ぶりが良かった。子供の教育にも熱心で、その子供は優秀な大学を卒業して、一流企業で高いポストに就いていたり、起業して年商数十億円を上げていたりする。いまさら年商数億円規模の企業に興味が無い。社内に番頭はいるが、この規模の企業ではイエスマンが多く、後継者の器となりえない」。
M&A後の経営は買い手の責任
あえてPMIには関与しない
一方、買い手には2つのタイプがあるという。ひとつは、戦略的にM&Aを活用する「良い買い手」(早嶋氏)だ。M&Aの成功確率は20件に1件とも言われるが、それは戦略の精度が不足しているからだ。
もうひとつのタイプは、潤沢なキャッシュを保有しているため、良い案件があれば何でも持ち込んでほしいと望むタイプだ。「こうした経営者は判断基準をもっていないので、検討に時間がかかりすぎる」(早嶋氏)。戦略の欠落もさることながら、M&Aは“鮮度が重要な旬の取り引き”であることを理解していない。
同社が関与するのは譲渡契約までで、あえてPMI(組織統合マネジメント)には関与しない。PMIにも関与するアドバイザリーが増えているなかで、なぜ関与しないのだろうか。
「『買収後は買い手の責任でシナジーを出す』というのが当社の考え方だ。当社がPMIに関わってしまうと、買い手との責任の分担が不明瞭になりかねない。買い手からPMIにも関わってほしいと望んでいるかどうかは、最初の面談でわかる。その場合は『経営に自信がないのなら買収を行わないほうがよい』と話して、お断りしている」。
アドバイザリー会社としては商機の損失だが、M&Aを通して中小零細企業の活性化、資産(経営リソース)の承継を推進することが同社の指針だ。手数料稼ぎに走らず、あくまで顧客(経営者)目線に立脚し、M&Aアドバイザー業務を推進している。
前編はこちら
売り手の大半は年商1億円以下
完全成功報酬で小規模案件に特化 | 株式会社ビザイン 早嶋聡史社長 インタビュー前編