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異例ずくめだった友好的なM&A / インタビュー後編

株式会社ビーロット 代表取締役社長 宮内 誠株式会社ライフステージ 代表取締役社長大塚 満

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「不動産業界の先輩経営者である大塚社長と、関西での事業展開についてお話をしているなかで、ライフステージの誠実な企業文化、関西圏での圧倒的な知名度、販売代理業という業務内容に次第に関心を寄せるようになりました。また、ビーロットは起業から8年ほどの『草創期』のチャレンジを重ねるベンチャー企業で、ライフステージは創業25年のいい意味での『成熟期』の安定した企業です。その両社が融合することで、さらに発展が望めると判断し、思い切ってM&Aを検討してみませんかと、16年の年明けに提案させていただきました」

そう語る宮内社長が率いるビーロットは独立系の不動産金融コンサルティング会社であり、大手ディベロッパーから業務を受注するライフステージにとっては〝色〟が付いておらず、もともと手を組みやすいパートナーだった。そして何よりも、不動産市場で新機軸を次々と打ち立てながら成長するビーロットの姿を目の当たりにして、大塚社長は「もともとは株式譲渡までは考えていませんでした。しかし、新築マンション市場の先細りが懸念されているのも事実です。将来に向けて、ライフステージの社員に組織としての成長の可能性や夢を与えていきたい、そのためにビーロットグループに入ることも、有効な手段のひとつだと感じたのです。」と打ち明ける。

それからライフステージへのデューデリジェンスが始まるのだが、今回はファイナンシャル・アドバイザリーなどの仲介業者が加わらない〝異例〟のM&Aとなった。すでに相思相愛の関係であり、あえて〝仲人〟など必要なかったのかもしれない。専門家の株価算定や、開示資料の精査、問題点の解決、協力金融機関からの審査も進み、4月28日にはビーロットによるライフステージの全株式取得となったわけで、これまた〝異例〟のスピードM&Aとなった。それだけ友好的なM&Aであったことの証左ともいえる。

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「実際にデューデリジェンスをして分かったこと。それはライフステージの最大の財産は『人』だったということです。ライフステージは09年4月末に民事再生に入ったものの、3年半の再生計画をわずか1年で終結させ、苦しい時期にもかかわらず多くの社員が残ったそうです。大塚社長の求心力、1人ひとりの社員が築き上げたお客様や取引先との信頼関係があったからこそ、自主再建を見事達成されたのでしょう。さらに90名を超えるライフステージの社員の皆さんは、ビーロットにはない大手デベロッパーへの販売実績、実需のお客様への販売力を持っているわけで、一緒になったら心強い仲間になっていただけるものと確信しました」

それだけに宮内社長は、子会社化後のライフステージの経営を大塚社長に委ねることに一切の迷いはなかった。そして、譲渡する株式の価格の交渉もスムーズに進み、4月15日のビーロットの取締役会での株式取得の決議、東京証券取引所における適時開示に至るわけだが、ここでも〝異例〟というべきサプライズがあった。宮内社長は開示後すぐに新幹線に飛び乗って、当日の夜に大阪のライフステージの本社で開催される全体会議に参加し、全社員に対する説明に臨んだのだ。

「そんなことをする買収側の経営者なんていないと言われました。しかし、友好的にやっていきたいという嘘偽りのない自分の思いを、皆さんに一刻も早く伝えたかったのです。処遇面での不安を訴える方もいましたが、今まで通りで全く心配のないことなどをきちんとお話しました」と宮内社長は言い、大塚社長も「宮内社長の意欲的な姿勢を理解した社員が大半でした。実際に子会社化の後に辞めた社員は1人もいません」と話す。

ライフステージの子会社化から約2カ月が経過し、同社の取締役を兼任するようになった宮内社長は毎月大阪で開催される取締役会に出席し、積極的に社員にも話しかけるようにしている。また、毎月行われるライフステージの全社会議では、東京支社の社員18名が新橋にあるビーロットの本社内のテレビ会議システムを大阪とつないで議論のやりとりを行なうなど、着実に相互の社員同士の交流が進んでいる。

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「これまでビーロットは開発・再生して付加価値を高めた物件を富裕層にターゲットを絞って1棟販売してきたわけですが、これからはライフステージの販売力を活かして、1棟20室の収益マンションを20人の方に再分譲することができます。逆にライフステージが販売代理を手がける分譲マンションをまとめて10戸買いたいという富裕層をビーロットから紹介できることだって十分にあり得ます」

宮内社長の話を大塚社長が隣りの席で頷きながら聞いている。

急成長企業としてスピード展開に拘るが故に、進出できずにいたビーロット大阪支社も、6月15日の取締役会で開設が決定した。

拡大への熱量に依存することなく、満を持しての「開発・再生」と「販売」の融合は、まさに〝鬼に金棒〟であり、「1+1=2」ではなく、「3」いや「4」「5」といったシナジー効果を生むだろう。今後のビーロットグループがどう成長していくのか、目を離せそうにない。

インタビュアー

KSG

関 幸四郎