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公認会計士らが設立、全国約650カ所の会計事務所が支援 延べ約2500件が成約、中堅・中小企業のM&Aで圧倒的実績 / インタビュー後編

株式会社日本M&Aセンター代表取締役会長分林 保弘

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日本M&Aセンターの旗揚げ以来、同社を育ててきた分林会長は、外資系コンピュータメーカーの日本オリベッティ出身。日本オリベッティは当時、全国の会計事務所や金融機関などにコンピュータを納入しており、会計事務所営業の責任者をしていたのが分林だった。「そもそも日本M&Aセンターが誕生したのは、会計事務所に中小企業経営者からの事業承継の相談が急増したのがきっかけなんです。90年前後はちょうどバブル経済で、資産価値が高騰し、中小企業のオーナーには相続税負担が重くのしかかった。そのコンサルティングをしているうち、そもそも少子化という背景から、中小企業は後継者不足に直面していることがわかったのです。そこで、私はオリベッティをやめ、会計事務所の有志が、中小企業の事業承継コンサルティングを行う全国規模の団体を作ってその代表をつとめることになりました。会計事務所の垣根を越えて結束した方が情報も集まるし、仲介も効率的にできます。団体なら公正中立な立場なので、クライアントも安心ですしね。そこで、仕事柄、全国の公認会計士、税理士の先生方を知っている私が、パイプ役を務めることになったんです。それに、私は、実はM&Aの経験は全くありませんでした。ただ日本オリベッティでは、単にコンピュータを売っていたのではなく、今で言う“コンサル営業”を当時から行っていたんです。さまざまな業種のクライアントが経営上でどんな問題を抱え、コンピュータの導入が問題解決にどうつながるのかを分析し、提案していたんですね。そうしたオリベッティで身に付けたノウハウが、中堅・中小企業のM&A仲介にも生かせました」

こうした成り立ちからもわかるように、日本M&Aセンターの強みは、全国の会計事務所をバックにした圧倒的な信用度と情報ネットワーク、それに仲介の実績である。

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現在、約650カ所の会計事務所(「地域M&Aセンター」として組織化)、約300カ所の地方金融機関(地方銀行約100行・信用金庫約200金庫)と連携、2000名を超える公認会計士・税理士などが情報会員として加盟している。また、各地の商工会議所、証券会社、ベンチャーキャピタル、コンサルティングファームなどとも情報を共有。全国の中堅・中小企業のM&A情報が集まる“プラットフォーム”と言ってもいいだろう。 これまでに成約したM&Aは2500件以上。事業譲渡を希望し、M&A仲介を契約している中堅・中小企業は現在、約500社に上るという。特定の地域や業種で中堅・中小企業のM&A仲介を手がけている地方金融機関・M&A仲介企業もあるが、全国・全業種にわたって事業展開しているのは、日本M&Aセンターに限られると言っていい(そうした地方金融機関やM&A仲介企業の多くも同社と提携)。一方、大手の金融機関やM&A仲介企業は大企業志向なので、中堅・中小企業のM&A仲介のノウハウに乏しい。中堅・中小企業のM&A仲介は、同社の独壇場となっているわけだ。

「信用を高めるには、M&Aの仲介をして終わりではなく、アフターケアも重要なんです。例えば、譲渡された企業の旧オーナーや役員にもしばらくは企業に残ってもらい、譲り受けた企業がノウハウを吸収できるようにしています。譲渡された企業のほうも、新オーナーの企業のインフラやノウハウを活用して脱皮し、成長できるようにする。そうしたウイン・ウインの関係で両社がシナジーを享受し、事業の存続・発展につなげることが、M&A仲介事業の最終的な目的なのです」

少子高齢化による生産年齢人口の減少、経済のグローバル化による産業空洞化など、中堅・中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。経営基盤を強化するため、あらゆる業種で企業のグループ化・集約化も進んでいる。中堅・中小企業のM&Aに対するニーズは今後、いっそう高まると予想される。

「かつては手塩にかけて育てた会社は自分の分身か、子供のようだと言う人が多かったのですが、経営者の意識も大きく変化しました。最近では、初めから会社を子供に継がせる気はなく、自分の代で売却する若手起業家も目立ちます。中小企業のM&Aが増えているのには、そうした背景もあります」

日本M&Aセンターは、ミッドキャップ(中堅企業)向けのダイレクトマーケティングの強化、マイクロキャップ(年商1億円未満の小規模企業)に対応するネット上の「どこでも事業引継ぎサポートシステム」の本格稼動などにも乗り出し、新たなマーケット開拓を図っている。時代の追い風を受け、ますます成長することが期待できそうだ。

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インタビュアー

KSG

眞藤 健一