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効果が絶大なのに、あまり知られていない2つの実務 | インタビュー後編

株式会社せおん

代表取締役 越 純一郎

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  • 2015年8月5日

また、効果が絶大なのに、あまり知られていない2つの実務を越氏は指摘する。

1つ目は、世界でスタンダードになっている「ほめる人材育成」だ。「ようやく国内でも『日本ほめる達人(ほめ達)協会』が設立され、ほめる人材育成が企業に導­入されてきている。ほめ達を導入した諸企業では驚くべき業績向上がみられ、伝統ある某外食チェーンは、それによってIPOできました。だから、投資ファンドが投資先企業に「ほめ達」を導入する動きを見せています。」と越氏、買収した企業の体質改善や業績アップのために「ほめ達」導入を勧める。

2つ目は、固定資産税の「過誤納」のチェックだ。驚くことに総務省の調査によると、2009~11年度の3年度間だけで、固定資産税の取り過ぎが発覚して減額修正されたケースが全国で25万件以上もある。これは氷山の一角にすぎず、膨大な件数の誤徴収、過大徴収が頻発している。しかも、大多数の企業はそれを知らない。

「ある大手製造業は、過去5年間の過誤納の分として数億円の還付を得ました。しかもその後の毎期、税額が減り、利益が増えるのです。機関投資家は保有不動産の固定資産税の適正化と還付の実務を行っていますが、製造業や医療機関の大部分では、納税者が過誤納に気づかず、放置されたままです。」と越氏はいう。

また、越氏は国内系のファンド等では、M&Aのデューデリジェンスの際に、知的財産権(Intellectual Property)の関係がほとんど顧みられていないことを越氏は懸念している。「特許マップ」ですら作成されていないことが多いという。「ライバル企業がこぞって出願している技術分野に新たな事業化を行うと、特許侵害などで一斉に反撃を受けることも考えられます。」と越氏は警告する。

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更に、米国の裁判制度にも目を向ける必要があって、輸出さえ行っていない日本企業でも、アメリカからの「裁判の輸出」に遭遇することがあるので、少なくとも「Discovery」や「弁護士依頼者特権(Attorney Client Privilege)」くらいの知識の習得は必須という。

前者は相手方が有する訴訟に関係するあらゆる書類や物を提出することを要求できる制度で、米国の子会社が特許侵害で訴えられた場合、日本の親会社も対象になる可能性が高い。これを知らなかった日本企業が、(大手企業であっても)深刻な事態に陥った例は少なくない。

後者の弁護士依頼者特権は、法律上の助言を得る目的でクライアントが弁護士との間で行った秘密のコミュニケーションについて、前者による開示を拒否できる特権のこと。「特許侵害がない旨の意見書を弁護士に書いてもらっていて、それを裁判所に提出すると、弁護士依頼者特権を放棄したものと見なされます。すると、その意見書に限らず、他の一切の弁護士と相談した内容も開示せざるを得なくなります。でも、そうしたことを知らないキャピタリストが少ないことは、とても心配です。」と越氏は語る。

高度成長期のオールドノーマルから、人口減少にともなう低成長期のニューノーマルへと構造変化に対応することは、ものすごく重要である。同時に、時代が変わっても、「1+1」は引き続き「2」であるように、変化しない真実もある。経営理念の重要性は、その好例である。構造変化と不変原則とを峻別して認識するべきとの越氏の指摘を、経営の現場で、そしてM&Aの実務で役立てていただきたい。

前編はコチラから

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