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M&Aの成功は、一人ひとりの社員が『自分事』として捉えられるか / インタビュー後編

GCAサヴィアン株式会社マネージングディレクター金巻 龍一

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金巻龍一

 相対する感情を、変革へのエネルギーとして活用する。

また、企業統合の大きな阻害要因となるのが「感情」である。どうしても買収側には「買ってやった」という気持ちが、一方の被買収側には「どれほどの力があるのか」という反発心が底辺でくすぶってしまう。その相対する感情を解消して、企業統合のプロジェクトを一気に押し進めるPMIの手法に「ファンクションミラーリング」による組織編制と、企業全体としての整合性をとりながらシナジー効果をアップさせていく「プログラムマネジメント」の導入がある。

「二つの会社がテーブルを挟んで右と左で会議をしているうちは、対立感情は解消しません。『会社 vs会社』の構図が色濃く、『弱みを見せたら負け』という雰囲気になりがちです。でも、両社の『製造』『販売』など、同じ業務を担当する人間同士をミラーリングして、別々の場所でそれぞれが会話をはじめると、すぐにお互いを認め合い、『実はさ、ウチの会社の悪いところはね……』と本音ベースで課題を出し合うようになってきます」
gcamirroring

そのミラーリングしたパートナー同士が、課題を出し合い「プロジェクト」となる。これらのプロジェクトの集合体を「プログラム」として統合的に作業を管理する。その際、各プロジェクトに〝横串〟を通し、組織間の最適化を追求する役割を担うのが「PMO(Program Management Office)」だ。統合スケジュールの管理、問題発見と解決、部門間意見調整、コミュニケーションなどの機能を担いながら、シナジーの最大化を図っていく。
gcapmo

金巻さんがPMIを進めるのに当って特に重視しているのが「スピード」で、基本的に3カ月以内の完了を目指すそうだ。

「時間に余裕を与えると、組織の底辺にある感情が悪い方向に向かいます。PMIに参画するメンバーが会社というよりも、出身組織の利害をどうしても気にしはじめてしまい、シナジー創出の大ブレーキになります」と金巻さんは話す。「時間がないから、皆さんが一丸となり本気を出すわけです」。

M&Aの成功は、一人ひとりの社員が『自分事』として捉えられるか

M&Aを成功に導くことができるかどうかの分かれ目が何かを金巻さんに問うと、「一人ひとりの社員が『自分事』として捉えられるようPMI作業が設計されているかです」との答えが返ってきた。資本形態の議論に終始し、「なぜこのM&Aが必要か」の議論が見えず、社員にしてみたら他人事にしか思えないようなM&Aが少なくないことを金巻さんは残念に思っている。「これでは、そのときは成功でも、それは未来に続きません」。

そうなってしまう理由の一つとして金巻さんは「企業の成長戦略から継続的なシナジーまでを一貫してサポートするM&Aアドバイザリーファームがなかったことが影響しているのではないか」という。そこで14年にGCAサヴィアンに入社した金巻さんは、PMIに関するスキル整備に着手すると同時に、M&Aの前段階である「成長戦略」立案のためのサービスを立ち上げ、GCAサヴィアンのサービスの総合化を推進した。今は、成長戦略の立案に関する引き合いが特に多いという。

M&Aアドバイザリーとコンサルタントは、長年、水と油と言われてきた。しかし、この組合せこそが、顧客である企業の株主価値だけでなく、顧客価値、従業員価値の向上を含む本当の意味での企業価値向上を実現できる。

「私にとって人生最悪の日は、PwCがIBMに買収されるとわかった日です。しかし、その後の10年間は私にとって人生最良の日々となりました。これこそが企業統合の最もよい事例だと思います。そして、そこで培ったPMIの手法やノウハウを惜しむことなくGCAサヴィアンのなかでオープンにして全員で共有していきたい。そうすることで世界トップクラスの日本企業を創出し、そこに関わる全てのメンバーが自己実現の喜びを享受できるようサポートできればと考えています」

一部の日本企業のなかにはM&Aの経験を積み重ねることで、デューデリジェンス、バリュエーションなどのスキルを身に付けてきたところが現れ始めているといわれる。当然そうなってくると、各々のM&Aアドバイザリーファームに求められることも変化していく。「GCAサヴィアンは、他のファームが躊躇するような難しいM&Aを進んで遂行しここまでになりました。今度の取り組みも今まで同様すぐに乗り切るでしょう」。

GCAサヴィアンのPMIに対する取り組みは新しい時代のM&Aアドバイザリーのモデルの一つになるのではないか。

インタビュアー

KSG

眞藤 健一

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