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富士フィルム、創薬ベンチャーのエディジーンに約5億円出資

富士フイルムは、創薬ベンチャーのエディジーンと、同社の第三者割当増資を引き受け、470百万円を出資し、これにより、同社全株式の11.7%を取得。また、今回の資本提携にあわせて、遺伝子治療薬(*1)の探索を目的とした共同研究契約を締結したと発表した。

今後、富士フィルムが持つ、有効成分を効率的に患部に届けるリポソーム製剤の技術と、エディジーンのゲノム(*2)編集技術を組み合わせて、アンメットメディカルニーズにこたえる遺伝子治療薬の創出を目指す。

ゲノム編集技術は、生物が持つ生体機構を利用して、遺伝子の切断や追加、削除を行う技術。なかでも、近年新たに発明・確立されたCRISPR-Cas9(クリスパー キャス9)(*3)は、ゲノム編集の効率性や簡便性、信頼性が従来技術よりも飛躍的に向上しているため、幅広い分野でその応用が期待されている。現在、医薬品分野では、従来の医薬品では完治できなかった遺伝性疾患などの原因となる異常遺伝子に直接アプローチして治療する遺伝子治療薬にCRISPR-Cas9を用いる研究開発が行われている。

エディジーンは、東京大学発の創薬ベンチャーで、CRISPR-Cas9をさらに改良したゲノム編集技術の研究開発や、次世代型創薬システムの構築に取り組んでおり、すでにCRISPR-Cas9の重要な構成要素で遺伝子を切断するCas9(酵素)を小型に改変する独自技術を確立し、本技術を用いて遺伝子治療薬の探索や研究開発を進めるなど、ゲノム編集分野で先進的な取り組みを行っている。

富士フイルムは、写真フィルムなどで培った、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術などを活用し、有効成分を効率的に患部に届け薬効を高めるリポソーム製剤(*4)の研究開発に取り組んでおり、なかでも、来年、臨床試験開始を予定している抗がん剤「FF-10832」は、既存薬(*5)を均一なサイズのリポソームに内包することで、薬剤の血中での安定性向上、患部への集積性向上、患部での薬剤放出を可能とするリポソーム製剤である。「FF-10832」は、リポソーム製剤化していない既存薬を投与した場合と比較して、1/60の低投与量でも同剤を大幅に上回る薬効をマウス実験で確認した。

富士フイルムは、エディジーンとの共同研究では、これまで蓄積してきたリポソーム製剤の技術を、ゲノム編集に用いられるRNA(リボ核酸)に適用し、遺伝子治療薬の創出を目指す。具体的には、エディジーンが設計・開発したRNAに最適なリポソームを開発。血中で分解されやすいRNAをリポソームに内包して血中の安定性向上を図り、さらに、目的とした細胞への送達性や細胞内での機能発現を確認するなど、遺伝子治療薬の研究開発を進めていく。

今後、富士フイルムは、新たな遺伝子治療薬の創出を通じて、アンメットメディカルニーズに対する新たな解決策を提供することを目指す。

*1 遺伝子を用いた医薬品。ウイルスを用いて投与した遺伝子の働きで細胞内の目的のタンパク質を増減させたり、ゲノム編集技術を用いて細胞内の目的とする遺伝子を書き換えることで、疾患を治療する医薬品などを指す。

*2 遺伝情報を司るDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)上のすべての情報。

*3 2013年に哺乳類細胞への応用が報告された最新のゲノム編集技術。膨大なゲノム(約30億塩基)の中から特定の遺伝子のみを認識し、削除・置換・挿入といった編集が正確かつ簡易に実現できる。遺伝子を切断する「はさみ」の機能を持つCas9(酵素)と、同酵素を遺伝子の狙った場所に運ぶ「ガイド役」のgRNA(ガイドRNA)を使用。これらを組み合わせることで、同酵素が標的の部位に結合し、遺伝子を切断する。

*4 リポソームとは、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質をカプセル状にした微粒子のことで、体内で必要な量の薬物を必要な部位に必要なタイミングに送達する技術であるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術の一種。カプセルの内部に薬剤を内封したものをリポソーム製剤という。

*5 米国イーライリリー社が開発した抗がん剤(一般名:ゲムシタビン、製品名:ジェムザール)。膵臓がんの第一選択薬として用いられ、そのほかにも幅広いがん(肺がんや卵巣がんなど)に用いられている。

<エディジーン株式会社の概要>
社名   エディジーン株式会社
代表取締役CEO 森田 晴彦
所在地  東京都中央区八丁堀2-30-16
設立   2016年1月14日
事業内容 CRISPR-Cas9技術を用いた医薬品の開発、プラットフォーム技術の提供

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