東証2部上場でマンション分譲事業のプロスペクトは、ロンドン証券取引所に上場しているイギリス王室属領ガーンジー会社法に従って設立された会社型投資ファンドであるThe Prospect Japan Fund Limited(以下、TPJF)の発行済株式の全部を取得するため、プロスペクトの普通株式を対価とする公開買付け(all-share offer)をガーンジー会社法に定めるスキーム・オブ・アレンジメントの手法に従い海外市場において行うことによりTPJFを完全子会社化すると発表した。
本件買収は友好的なものであり、TPJFの取締役会は本件買収につき、全会一致で賛同している。
プロスペクトは、従来「グローベルマンションシリーズ」をマンションブランドとするマンション分譲事業を主たる事業としてきた。しかしながら、プロスペクトが属する不動産業界は、用地・建築費の上昇基調等から収益拡充が難しく、不動産マーケットの変動による影響が大きいと考えており、こうした状況から、企業として収益を確保し、かつ、安定的に成長していくためにM&A戦略を実施し、2012年11月にハウスビルダーであるササキハウスを買収したことを皮切りに、2013年8月には投資顧問および不動産業を営む(旧)プロスペクト、さらに、2014年3月には建設会社である機動建設工業を 100%子会社化しており、企業グループとして、マンション開発に留まることなく事業分野を拡大し、地域的リスク分散を図りつつ収益基盤の強化を図ってきている。さらに、シナジー効果も期待できる新たな事業として、2014年9月には太陽光発電という不動産開発および売電事業としてのソーラー事業を開始した。
上記M&Aやソーラー事業投資により、プロスペクトグループにおける事業ポートフォーリオの拡充が進んだものの、依然として、安定した主力事業として収益の柱といえる水準には達しておらず、今後も安定した収益を確保し続けるために、また、将来の企業成長を期するためには、引き続き、継続的なM&A、バイオマスを含む次世代エネルギー投資事業等の拡大により、収益基盤の確保、事業ポートフォーリオの拡充を急ぐ必要があると考えている。
一方、TPJFは、日本の上場株式に重点的に投資を行うことを目的に組成され、1994年12月20日にロンドン証券取引所に上場した会社型投資ファンドであり、欧米の機関投資家やファンド・オブ・ファンズなどを主たる投資家とするファンドを通じて出資された資金の運用先として、不動産・金融・建設分野のスモールキャップ銘柄を中心にバリュー・グロース投資のポートフォーリオを形成している。TPJFは、クローズドエンドの上場ファンドであり、現株主であるファンド等からの出資金をもとに無借金でプロスペクトを含む投資ポートフォーリオでの運用を行っているが、ロンドン証券市場における一日出来高は2016年1年間の平均で14千株、2017年4月の単純平均で18千株と流動性が低い状況が続いていることに加え、上場株を中心とした資産構成であるにも関わらずPBR(株価純資産倍率)0.67倍(2016年12月31日時点)と1倍を下回る水準となっており、海外市場において日本のスモールキャップ銘柄の潜在価値や成長余力に対して十分な評価が得られていない状況である。
プロスペクトとTPJFは、プロスペクトが2007年5月に旧株主のグループを離れ、自主独立経営を開始するにあたり、TPJFが新たな株主となったことを契機として、これまでも友好的な協力関係を構築してきている。TPJFはプロスペクトへの投資開始以降、ファンドとしての資産入替等を理由とした売買等によりその保有株式数を変動させているものの、純投資および状況に応じて重要提案を行うことを保有目的として、現在に至るまで一貫してプロスペクト株式を継続保有している。また、プロスペクトグループの投資運用事業を担う子会社であるプロスペクト・アセット・マネージメント・インク(PAMI)および子会社であるプロスペクト・アセット・マネージメント(チャンネル諸島)(PAMCI)がTPJFの日本株運用の投資顧問と投資助言業務をそれぞれ受託する関係にあり、PAMIのチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)およびPAMCIの役員をプロスペクト代表取締役社長カーティス・フリーズが務めるという人的関係も有している。
こうした資本的・業務的・人的関係性を背景として、TPJFには過去にも、TPJF取締役会の承諾を得てプロスペクトが発行した転換社債型新株予約権付社債や新株予約権の割当の引受先となっている等の実績があり、プロスペクトの事業目的や経営方針について継続的な理解を有している。
プロスペクトおよびTPJFは、両社の経営環境が厳しさを増す現状を踏まえ継続的な協議を重ね、今回、本件買収の実現が両社にとって大きな意義があるものであることを確認し、両社の経営資源を融合することが、両社の課題の解決および企業価値の飛躍の実現にあたり有効な手段であるとの結論のもと、今回の買収に至った。