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黒字定着は再生のスタートライン「企業再生」最前線 | インタビュー後編

KSG (株式会社経営戦略合同事務所) 代表取締役社長 眞藤健一

株式会社ビジョンメガネ 代表取締役社長 安東晃一

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  • 2016年5月31日

「私がビジョンメガネの企業再生にあたってテーマにしたこと。それが『変えない』ということでした。100点満点の会社など、どこにも存在しません。何かマイナス点のところがあったとしても、致命的でなければ許容したほうがいいのです。『角を矯めて牛を殺す』という格言もありますが、何がなんでも悪い点を全て直そうとしても、新たに悪い点が生まれ、かえって悪い状況に陥ってしまうことすらあり得るのです」

そう語る眞藤社長だからこそ、安東社長をはじめとする経営陣の入れ替えは行わなかった。かつてのドミナント戦略で出店した同一商圏内の一部店舗を、経営効率の面から統廃合することがあったが、後ろ向きなリストラクチャリングも一切行わなかった。その結果、金融機関、取引先の理解を得て債務減免を実現し、14年8月に再生計画を終結させた。民事再生の適用申請からわずか9カ月後のことである。そして15年12月期の業績は、売上高53億9328万円、営業利益3億4223万円の水準まで回復しているのだ。

その再生計画の終結の後に眞藤社長が取り組んだのが、全店舗に自ら足を運び、店長や従業員と直接話をすることだった。その場で眞藤社長がまず強調したのが、最悪の事態を回避できて、これからは安心して働ける環境になったこと。さらに、会社の経営が悪くなるのは、全て経営陣の責任ではないということを説いた。経営陣は1つひとつの店舗の現場のことまで目配りはできない。もしも、現場で何か問題や課題が発生すれば、その改善策を含めて積極的に声に出していくことが、現場を任せられた者の責務となる。

「去年、眞藤社長は全社員に対して動画でのメッセージを送ってくださいました。そこで改めておっしゃったのが『変えてはいけない』ということでした。ただし、変えてはいけないのは、あくまでも自分たちの強みや良さなのです。」

「その一方で、ビジョンメガネを取り巻く環境はどんどん変わっています。自分たちの強みや良さを活かすための変化は常に求められていることを眞藤社長は『裏声』で訴えていらっしゃるわけで、従業員もそのことを理解して実践するようになっています。」

そう話す安東社長が眞藤社長と一緒に進めているのが、販売単価の高額化だ。目下のメガネ市場はロープライスが主戦場となっていて、厳しい競争が繰り広げられている。わざわざ、そこに参戦するのが得策ではないのは自明の理。

むしろ値の張る高級なメガネであれば、利幅が大きいうえに、これまで培ってきた技術力や接客力をフルに活かすことができる。「民事再生の申請時に2万2000円前後だった販売単価は、いまでは3万6000円ほどにアップしています」と安東社長はいう。

そうした動きをさらに加速させるため、今年3月に大阪・枚方で投入した新業態の店舗が「eyevory(アイボリー)」である。顧客は街中のカフェのような雰囲気のなかで、ゆっくりとメガネを選ぶことができる。「いまはファッション重視の20代、30代の方々のなかにも、掛け心地などで専門家のアドバイスを求めている人が少なからずいて、そうした潜在需要を喚起する拠点になるでしょう」と眞藤社長は期待を寄せる。

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そしてもう一つ、企業再生のなかでビジョンメガネが大きく変わってきたのが、スピード感のある経営への移行だ。眞藤社長の主導によって毎週1回、経営会議が行なわれ、その場で「イエス」「ノー」の決済が下される。もしも提案したことが却下されても、その理由が明示されるので、改善のヒントになる。実際に何度も再提案して日の目を見ることも少なくなく、全従業員のヤル気を喚起しているそうだ。

先ほど紹介した15年12月期の業績数字を見るとV字回復のようにも思えるのだが、眞藤社長は「まだ企業再生のスタートラインについたばかりです」という。ピーク時の店舗数は275店。それに対して現在は110店。サービスを提供できなくなった顧客のことを考えれば、再出店していくのがビジョンメガネにとっての社会的な責務といえる。今年の新規出店は10店舗前後を計画しているが、その責務を全うする道のりは長い。だから眞藤社長は気を引き締めるのだ。

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また、そうした過程でビジョンメガネが業容を拡大していくのにともなって、M&Aやグローバル展開に進む局面も迎えることになるだろう。「当然そこで私たち経営戦略合同事務所のリソースを活かすことができます。単なる企業再生のスポンサーとして利益を得るのではなく、お互いにウィン‐ウィンの関係で成長していくことが、他の再生支援会社と大きく違う点なのです」と眞藤社長は強調する。これからも、ビジョンメガネと経営戦略合同事務所の二人三脚の歩みからは、目を離すことができそうにない。